『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』 途中からネタバレ込で感想|これ、あの名作ラブコメ映画のアップデート版ですよ。

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『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』の感想です。もうだいぶ前に見たんだけど、『パラサイト 半地下の家族』の感想に苦戦していて書くのが遅れてしまった。

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結論から言えば、この映画はあの名作ラブコメのアップデート版であり、オマージュ映画です。

『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』あらすじ・映画情報

あらすじ

アメリカの国務長官として活躍する才色兼備なシャーロットフィールド。大統領選への出馬を目前にして、ジャーナリストのフレッドに、選挙のスピーチ原稿作りを依頼する。常に世間から脚光を浴びるシャーロットと共に行動するうちに、高嶺の花と知りながら恋に落ちるフレッドだったが、越えなければならない高いハードルがいくつも待ち受けるのだった…。

TOHOシネマズ公式サイトから引用

作品情報

今回取り扱うのは、『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』(以下『ロング・ショット』)である。

アメリカ大統領候補の完璧な女性を演じるシャーリーズ・セロンと、失業中のフリージャーナリストを演じるセス・ローゲン。美女と野獣カップルのラブコメである。シャーリーズ・セロンといえば、『アトミック・ブロンド』『イーオン・フラックス』などのアクション映画で主役を務め、2010年代の映画史に残る傑作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でも実質上の主役であるフュリオサを演じた美人女優として知られている。

対するセス・ローゲンは、『40歳の童貞男』や『スモーキング・ハイ』などのコメディ映画で知られるコメディアンで、『スティーブ・ジョブズ』でウォズニアックを演じたことも記憶に新しい。そんな彼は実写版『ライオン・キング』でプンバァの声を務めたからも分かる通り、決して二枚目とは言えないタイプの俳優である。そんな彼と、完璧な女性の不釣り合いな恋愛を描いたラブコメだ。評判は結構よく、「下ネタ満載のラブコメ!」とよく紹介されることが多い。

だけど実際にこの映画を見てみると、それだけではないなと思いました。序盤からあの作品のアップデート版じゃね?と思うような展開をして、終盤ではおもいっきしパロディもやっていて、絶対これ意識してやってんなって思ったんですよね。

でも、この映画のことを「〇〇〇〇〇〇〇〇」のアップデート版ですって紹介されているものがない。もうみんな気づいていると思うんですが、あまりにも「下ネタ満載のラブコメ!」とか「男女逆転シンデレラストーリー!」としか言われていないので、今回はこのことについて書いていきます。

『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』感想

おすすめ度 81/100

『メリーに首ったけ』2.0

『メリーに首ったけ』

いやこれ、どう考えても『メリーに首ったけ』2.0だろ。と思ったんですが全くこういうことを書いている記事がない。なんでなんだろ?どう考えてもそうだしメジャーな映画だから絶対僕以外にもそう思った人いると思ったんだけど、映画ブロガーの記事とかをみてもそう書かれたものがない。なので代わりに書くかと思ったんで、書いていきます。

『メリーに首ったけ』とは

『メリーに首ったけ』は『グリーンブック』のピーター・ファレリー監督と、彼の弟のボビー・ファレリー監督のファレリー兄弟コンビの代表作。キャメロン・ディアスとベン・スティラーの出世作でもあり、お下劣コメディという概念の映画の元祖とも言われている作品だ。メリーという「完璧な女性」と、モテないが優しい心を持つテッドの恋愛を描くラブコメで、それを過激な下ネタを含めて描き、大ヒットした。

2020年1月現在U-NEXTで見れるようです。

U-NEXTについて

この映画に出てくるメリーは「完璧な女性」だ。可愛くて、スタイルがよくて、エロくて、天然で、優しくて、男の趣味に理解があって、『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』を好きな映画と挙げるレベルのサブカル好き。完璧である。男にとっては。

※ちなみに『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』について簡単に言及しておくと、この作品は老いた心を持つ少年と天真爛漫な老婆の純愛を描いたカルト映画だが、この作品をベストに挙げるメリーは絶世の美女なのにルックスより心を大事にするタイプであるということも意味している。(『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』も2020年1月現在U-NEXTで見れるよ!有能だね!)

メリーは男ウケという観点で完璧な存在だ。つまり、男にとって好都合な性格と美しい容姿を組み合わせた妄想の産物だ。だがこんな女性はこの世に存在しない。この自我を持たないような、男性に性消費されるためだけに描かれたようなヒロイン像に憤る人も多く、ギリアン・フリンはその反論として『ゴーン・ガール』という小説を執筆したのは有名な話だ。

※ネタバレしないように話すと『ゴーン・ガール』は夫にとって完璧な妻を演じた女性の話だ。詳しくは小説or映画を見てください。

そんな賛否両論のラブコメ映画、『メリーに首ったけ』のあらすじを見てみよう。

内気な高校生・テッドは憧れの女性・メリーとプロムパーティーに行く約束をする。だがパーティー当日にズボンのファスナーで大事な部分を挟んでしまい、デートは白紙に。13年後、メリーのことが忘れられないテッドは、探偵のヒーリーに彼女の調査を依頼する。

U-NEXT『メリーに首ったけ』ページから引用

モテない高校生のテッドは、完璧な美少女、メリーとプロムに行く約束をするものの、トイレで大事なものをチャックで挟んでしまい股間がパンッパンに膨れ上がってしまう。そしてその姿をメリーにも見られてしまい、救急車に運ばれ、プロムには行けず嫌な思い出をずっと引きずることになる。数年後にメリーと再会するも、彼は辛い過去のことを忘れることができない。

つまり、昔から憧れだった女性と再会を果たすも、過去のトラウマのことが気になり、なかなか話しかけることができない状態にある。そんなテッドはメリーのことが気になり私立探偵を雇って彼氏がいないか調査するのだが......。という話だ。

『ロング・ショット』のプロット

では『ロング・ショット』のプロットを見てみよう。

『ロング・ショット』では、「完璧な女性」であるシャーロットと、シャーロットがティーンエイジャーだった頃シッターを務めていた幼馴染で、彼女に恋心を抱いていたフレッドの恋愛が描かれる。

そしてシャーロットと久々にパーティで再会したフレッドは、過去のトラウマを思い出し、一度話すのをためらう。そんな出会いから始まるこの物語は、『メリーに首ったけ』を意識しているとしか思えない。端的に言えばどちらも昔から憧れだった女性と再会を果たすも、過去のトラウマのことが気になり、なかなか話しかけることができない男が逆転する話だ。『メリーに首ったけ』と関係性がほとんど同じなのだ。

この『ロング・ショット』が『メリーに首ったけ』と違う点は、ガチな意味での完璧な女性になってるという点だ。シャーロットは才色兼備の大統領候補である。スタンダードな意味で、完璧だ。天然ではなく頭がよく、リーダーシップがある。好感度も高く美人で、スペックが高い。

つまり、『ロング・ショット』は現代のポリティカリー・コレクトに合わせて『メリーに首ったけ』をアップデートした作品なのだ。男性ウケという観点で完璧だった女性を、普遍的な意味での完璧な女性に変えた、下ネタ満載のラブコメだ。そして終盤にはどストレートなパロディもやる。このことに関してはネタバレ込みのところで書きます。

TVでシャーロットの活躍を見て陰ながら応援していたフレッドは、モテないけど愛嬌・ユーモアがある。そんなフレッドと久々に再会し、ライターとして雇ったシャーロットは、共に行動するうちにフレッドに惹かれる。だが、「完璧な女性」であるシャーロットに見合わないフレッドをシャーロットの主要スタッフたちは心配し、彼をシャーロットに見合う紳士として教育するという、男女逆転『マイ・フェア・レディ』状態になるという展開になる。

シャーロットとフレッドが付き合っていることが報道されれば、支持率が急落してしまう可能性が高い。現状噂されているイケメンのカナダ首相ではなく、ヒゲモジャなフリージャーナリストが恋人だと分かれば、彼女のイメージに傷がつく。そう思ったシャーロットのスタッフ達は、フレッドに紳士になる教育を施そうとするが、フレッドはヘプバーンと違って顔が美形なわけでもない。なのでフレッドは紳士になれず、その結果シャーロットとフレッドは別れざるを得なくなる......。という物語が展開する。

まとめ

とりあえずネタバレなしで書けるのはここまでかな。かなり面白い作品だったんで、ぜひとも見てください。映画本編を見てから、次のネタバレ込みのところ読んでください。

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ネタバレ込みで

ネタバレしますよ。

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ヘアジェルとシェービングジェル

『ロング・ショット』の終盤に『メリーに首ったけ』で最も有名なシーン、「ヘアジェル」のドストレートなパロディがある。

シャーロットの公約が自身にとって不都合だったメディア王と現職の大統領はグルになってシャーロットをはめる。「公約を緩和しなければ、ハッキングで盗撮したフレッドのオ〇ニー映像を全米に公開する。嫌なら公約を緩和しろ」と。

そして彼女は大統領選で自分がこだわっていた環境政策の公約を妥協せざるを得なくなる。このフレッドのオ〇ニー動画には、フィニッシュの際自分の〇液が顔面にぶちあたり、髭に白い物がつく一部始終が撮影されていた。もうこのシーンで制作陣たちが何がやりたかったのかがわかる。『メリーに首ったけ』2.0だ。これで何が言いたいのかわからない場合はとりあえず『メリーに首ったけ』を見てください。何も知らない状態で見たほうが楽しめると思うんで。

つまりはこの映画は、『メリーに首ったけ』の「男にとって」完璧だった女性を「普遍的な意味で」完璧な女性に変え、わりかしリアルに物語が展開するような『メリーに首ったけ』のアップデート版であり、終盤にはどストレートなパロディも含んだオマージュ映画なのである。

そしてエンディング、大胆な逆襲に出たシャーロットは、無事に大統領に就任。全米に恥を晒した結果好感度が爆上がりしたファースト・ジェントルマンのフレッドと、大統領になったシャーロットの鴛鴦夫婦が楽しそうにホワイトハウスを紹介するビデオで終了。最高にハッピーな気持ちになる傑作でした!

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