『ジョジョ・ラビット』感想・評価|戦争風刺コメディ映画の佳作だがややインパクト不足?

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2020年初レビューの作品は『ジョジョ・ラビット』になりました。ほんとはこの作品より前に見た『パラサイト 半地下の家族』『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』について書きたかったんですが、先にこっちを書き終えたんであげときます。

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結論から言うと、まあまあ、という感じでした。期待しすぎない程度で見るくらいがちょうどいい作品だなあと思いました。

『ジョジョ・ラビット』あらすじ・映画情報

あらすじ

第2次世界大戦下のドイツに暮らす10歳のジョジョは、空想上の友だちであるアドルフの助けを借りながら、青少年集団「ヒトラーユーゲント」で、立派な兵士になるために奮闘する毎日を送っていた。しかし、訓練でウサギを殺すことができなかったジョジョは、教官から「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名をつけられ、仲間たちからもからかいの対象となってしまう。母親とふたりで暮らすジョジョは、ある日家の片隅に隠された小さな部屋に誰かがいることに気づいてしまう。それは母親がこっそりと匿っていたユダヤ人の少女だった。

映画.comから引用

1月は注目映画の公開ラッシュだ。毎週、注目作品が2本以上は公開されてるんじゃね?という感じがする。今回取り扱う戦争風刺映画、『ジョジョ・ラビット』もそんな作品の一つで、『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』『マイティ・ソー バトルロイヤル』などで知られるタイカ・ワイティティ監督の最新作だ。2019年のトロント国際映画祭で観客賞を受賞したので、アカデミー賞にも間違いなく絡んでくる。

2018年にトロント国際映画祭で観客賞を受賞した『グリーンブック』は、アカデミー作品賞を受賞したし、それ以前に観客賞を受賞した作品には、『スリー・ビルボード』『ラ・ラ・ランド』などもある。アカデミー賞で作品賞受賞を期待されるような名作ばかりが受賞する、アカデミー賞の前哨戦とも言われている賞だ。そして2019年にトロント国際映画祭で観客賞を受賞した『ジョジョ・ラビット』も、先週発表されたアカデミー賞のノミネート発表でいくつかの部門にノミネートされていた。

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だが、賛否は割と分かれている。

IMDbの評価はオーディエンスの点数が8.0/10。なのでかなり高め。だが、批評家の点数は58点と、そこまで高くない。僕はIMDbの評価は批評家の点数のほうがしっくりくるタイプで、同じく批評家の点数が高くない『グレイテスト・ショーマン』(48点)や『ジョーカー』(59点)はみんながいうほど好きではない。なので、あまり期待はせずに見た。その結果まあ、「みんながいうほど好きな作品ではないなあ......。」というような印象でした。僕のTLでは絶賛評ばかりだったんで、こういう記事をアップする気はなかなか起こらなかったんですが笑。僕の感想を書いていきます。

『ジョジョ・ラビット』感想

おすすめ度 74/100

新たなる第二次世界大戦コメディの佳作ではあるものの、ややインパクト不足か。

ジョジョの奇妙なイマジナリーフレンド

この映画の特徴は、イマジナリーフレンドとして登場させることによって、ヒトラーを悪意たっぷりに風刺したコメディという点だ。第二次世界大戦をテーマにしたコメディには『独裁者』『ライフ・イズ・ビューティフル』などといった作品があるが、本作はその映画史に新たな1ページを刻む作品だ。

チャップリンが監督主演を務めた『独裁者』は、チャップリンがヒトラーを悪意たっぷりに演じたことで有名な作品だが、本作『ジョジョ・ラビット』では、ユダヤにルーツを持つタイカ・ワイティティがヒトラーを演じる。また、チャップリンの『独裁者』で、もともと台本に書かれていたラストシーンの「ダンス」が、『ジョジョ・ラビット』を読み解く重要なキーワードになったりもする。

 

本作の監督も務めるタイカ・ワイティティは、ニュージーランドの高田純次と言っても過言ではないおちゃらけた風貌だが、『マイティ・ソー バトルロイヤル』などといった傑作を手掛ける今注目の監督でありコメディアンだ。

そんな彼が悪意たっぷりに、ときに変顔で、ときに暴れながらイマジナリーフレンドのヒトラーを演じる。このヒトラーが一番の親友である10歳の少年、ジョジョの視点から、第二次世界大戦を描いている。

(出典:タイカ・ワイティティ監督がヒトラーに!映画『ジョジョ・ラビット』日本版予告編)

また、ウェス・アンダーソン風味な作風で作られているのも特徴。ポップでカラフルな2010年代を代表する反戦コメディの傑作『グランド・ブダペスト・ホテル』を彷彿とさせるような作風になっている。明るくて陽気な、ポップな色合いが特徴的なコメディだ。だが作品が進むにつれ、ジョジョの日常に戦争のむごたらしい現実が侵入していく。

 

インパクト不足?

まあ、完成度は高いですよ。役者もみんな良かったし。万人受けするだろうなーという印象だった。ただ僕としては、戦争を描いたにしてはインパクトが不足しているような気がした。

その理由の一つに、物語が昔から描かれているようなプロットで王道。つまり意外性はなく既視感がある展開をするという点が挙げられる。「ネオナチがユダヤ人と出会い交流することによって、心を入れ替える」という内容の作品、もしくは第二次世界大戦でなくとも、このネオナチを差別主義者に、ユダヤ人を被差別者に入れ替えたような物語は今までたくさん作られてきている。

なので、既視感が強く想像通りの展開をする。なので期待をあまり超えてこない。またこの映画はウェス・アンダーソン的な明るさが特徴ではあるものの、『グランド・ブダペスト・ホテル』ほどの強烈さではない。突き抜けてビビッドではない。なので、割と見慣れている感じなのに真新しさがそこまでなく、ややインパクトに欠ける。

(出典:映画『グランド・ブダペスト・ホテル』予告編)

加えて、ジョジョという少年の視点から描いた戦争なのでしょうがないにしろ、一つの悲劇はあるにしても全体的にインパクトを残すほどの強烈な凄惨さがない。例えば映画史に残っている戦争映画、『戦場のピアニスト』『炎628』では地獄絵図が描かれるが、『ジョジョ・ラビット』は風刺コメディなのでそういう描写が少ない。

そのため、餓死者や虐殺されたユダヤ人が道端にポイ捨てされたゴミのような感覚で存在する景色に病みそうになる『戦場のピアニスト』や、ユダヤ人の少年が行く先行く先で地獄のような体験を輪廻転生したかのように繰り返し続ける『ペインテッド・バード』(2019年の東京国際映画祭で見た映画でもうそろそろ全国公開するという噂を聞いた)などの作品と比較すると、戦争の悲しさやむごたらしさをあまり描けていないのではないかという感じもする。コメディなのでしょうがないが、「映画史に残る戦争映画」と比較すると、かなり薄味な反戦コメディに感じてしまうのだ。まあまあな出来ではあるものの、2020年の重要作品に選ばれるほどの大傑作だとは思わなかった。

まとめ

簡単に言うと、ヒトラーをユダヤ人が悪意たっぷりに演じて、『独裁者』のオマージュも捧げた、第二次世界大戦コメディの新たなる秀作ではある。でも、そんなに真新しさは感じないし、ヘビーな戦争映画と比較するとそこまでインパクトを感じませんでした。

トロント国際映画祭の観客賞ってことでかなり注目されている作品ですが、まあ『グリーンブック』って映画も個人的に2019年のベストに入れるほど突出して優れた作品だとは感じませんでしたし、そこまでタイプじゃなかったなーというのが僕の感想です。万人受けはする作品ではあるけど、僕にとって一生モノの戦争映画ではなかった。ただ、実際にトロントで観客賞を受賞したりしていて、絶賛評も多い作品であることには間違いないし、オスカー候補の作品なんでぜひとも劇場で御覧ください。

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