「恐怖の報酬」 <br>ブラック企業に苦しむのは今も昔も同じ

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アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の代表作で、カンヌでグランプリ受賞した作品ですね。当時まだパルムドールがなかったので最高賞ってことになります。

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非常に評判も良くて、映画の本にもたびたび登場する作品なのでずっと見る予定だったんですけど、あまり気乗りしない作品でした。

というのも昔、高校の世界史の授業で先生にネタバレされて、見る気が完全に失せたからですね。今回レンタルして見てみたら、あら不思議。めちゃくちゃおもしろかったです。展開どうなるか知ってても面白いですけど、なるべく回避してから見たほうがいいですよ。

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「恐怖の報酬」あらすじ

ベネズエラの場末の街ラス・ピエドラス。そこは職が無く、食い詰めた移民達が日々何もすることもなく暮らしている。マリオ(イヴ・モンタン)もその一人であった。そこに、ホンジュラスからジョー(シャルル・ヴァネル)がやってきた。マリオとジョーは同じフランス人、意気投合しながら遊んでいた。

そんなある日、500km先の油田で火事が起きた。石油会社は火を消し止めるためにニトログリセリンを500km先の現場までトラックで運ぶことに決めた。安全装置のないトラックでニトロを運ぶのは命がけである。そこで街の食い詰め者に2000ドルの報酬で運ばせることにした。

選ばれたのは、マリオ、ジョー、ルイージ(フォルコ・ルリ)、ビンバ(ペーター・ファン・アイク)の4人。彼らは2台のトラックに分かれ、500km先の目的地に向かう。

マリオとルイージが出てくる。コンビを組むのはマリオとジョー、ルイージとビンバだが、ルイージの方はどう考えても配管工のほうのマリオの元ネタになったとしかと思えないビジュアルをしている。任天堂の方は否定してるっぽいけど、元ネタだと思うなあ…

 

最高賞とは思えない娯楽性

この映画、思ってたよりも娯楽性が強くてびっくりしましたね。基本的にカンヌを筆頭とした映画賞ではアート系の作品がよく受賞して、娯楽性の高い作品はなかなか獲らないイメージがあるんですけど、映画をあまり見ない人が見ても楽しい、ハラハラ・ドキドキ系の作品でしたね。

爆発物を積んだトラックでとんでもない苦難が待ちわびているため、ハラハラ・ドキドキ。この人達、いつ爆死するのかわからない。道中でゲーム的なアクションをしながら、爆破の危機を回避する。
そもそもこの設定自体が極めてゲーム的ですからね。先程あげたツイートでも書かれていたとおり。

彼らは「ゼルダの伝説」や「アンチャーテッド」のダンジョンの攻略のように、どう考えても進むことができないような通路を、1つしかないような手段で道を切り開く。揺れたら爆死するような状況でとんでもない悪路を走らなければならない。どんな展開になるのか知ってても惹きつけられました。


今も昔も変わらない

それでもただの娯楽作にならず、社会に対するメッセージを描いているところもすごい。

男たちはバーで入り浸り、働いていないが、職になかなかありつけない。金を儲ける手段があまりにもないのだ。彼らは不法移民、職に就くのが非常に難しい。今年のパルムドール、「万引き家族」でも描かれた、まともな職に就くことができない人々のことを描いている。
今の社会でも「遊んでないで働け!」って言われるけど、その人達にとって、就こうと思っても就く職がない。今も昔も同じだなあ…

そんな中、大火事が起こる。あいつらならどうせやるぜ!というオーナーが金を渋って安全装置のないトラックを使って生きるか死ぬかの労働をさせる。そこに人権など存在しない。職がない男たちは権力者の言うことを聞くしかないのだ。藁にもすがる思いでその職に応募する。

そんな中で、「肺がセメント漬けで1年くらいしかもたん」とか言われたり、職につけなかった結果自殺者が出てきたり、劣悪なブラック企業的社会の病巣がきっちりと描かれている。社会批判を織り交ぜている。

元大物の初老、ジョーもこの命がけのミッションに参加するが、道中で「おい、お前まじか。」って言いたくなるようなことばかりする。仲良しだったマリオもこれにはびっくり。そんなドラマも展開する。

トラックでの移動が始まるのが開始1時間後で、その前のくだりがちょっと長すぎるかなあと思わなくもなかったりするけど、社会的メッセージと娯楽性の高さを均衡に保っているレベルの高い作品でした。

※ウィリアム・フリードキンがリメイクした「恐怖の報酬オリジナル完全版」も見ました。レビュー記事はこちら

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