高評価の映画「人生フルーツ」を手放しで褒めたくないただひとつの理由

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ようやく見れた。ずっと見たかったけどなかなかスケジュールが合わずに見ることができなかった作品。
いい意味でも悪い意味でも、旧態依然の教養主義インテリが好みそうな作品だったなあ。

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人生フルーツとは

この映画の存在は2017年の3月頃に知った。シネ・リーブルなどのミニシアターで封切られたときからまあまあ話題になっていた。

でも見るつもりは全くなかった。評判よければDVD借りて見ようかなあって感じだった。

だがこの映画、あまりにも評判がいい。キネ旬ベストテン、文化映画部門で1位。みんな大絶賛。それなのにDVDが出ていないし、発売される気配もない。実際発売される予定はないらしくて、映画館でしか見ることができない。

※台湾版が楽天やヤフーショッピングで発売されていることが最近わかりました。この記事の一番下にリンクを張っておきます。

かなり見るのが難しい作品なわけだけど、樹木希林さんの追悼上映企画としてアンコール上映する劇場が何箇所かあって、KBCシネマでもやっていた。奇跡的にスケジュールが合ったため今回見ることができた。

あらすじ

風が吹けば、枯葉が落ちる。
枯れ葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。人生、フルーツ。

名古屋近郊の高蔵寺ニュータウンの一隅で、雑木林に囲まれ自給自足に近い生活を営む建築家の津端修一氏と妻の英子さん。津端夫婦の生き方から垣間見える、ゆったりとした暮らしを切り取り、真の豊かさとは何かを描く。

 

前提として、完成度はものすごく高い。津端修一さんのライフスタイルを美しく切り取っていて、考えさせられる作品なのは間違いない。だが、この映画をオールタイム・ベストとか今年(去年)のベストにして満足しているだけの人とは関わりたくない。

なぜかというと、こういった映画を見て自己を正当化しようとする輩がほんとに嫌いだからだ。

スローライフの教科書

一言で言えば、スローライフって素晴らしいよね!という作品である。

この映画の魅力は端的に言えば「理想を体現した男」のライフスタイルを見れることだ。ドキュメンタリー映画といえば、なにか偉大な功績を残した誰もが知ってる有名人が主人公になる場合が多いが、本作の主人公は少々地味だ。だが、その暮らしぶりを見るだけでもものすごく楽しめる。

自家製ベーコンを作っている姿とか、人付き合いを大切にして文通する姿とか、70種の野菜と50種の果実を育てて食するライフスタイルを今の時代に行っていることに驚き、こんな生活を送ってみたいなあと思わせる。

だがこれは、あまりにも完璧な、稀有な成功例だ。

スローライフのよさを誰にでも伝わるように、ありのままに撮影されているけど、実際やってみようとするとうまくいかない。それを知っている田舎民の僕にとって、あまりにも完璧すぎて、スローライフのきれいなところしか切り取っていないように見える。

在宅勤務でなければ絶対無理だし、仕事に追われていたら難しい。夫婦仲が悪かったりしても無理だし、夏は熱いし冬は寒いぞ。涼しい顔でやってるけど津端さんのような人でない限りこんなライフスタイルはなかなか難しいぞ。と思ってしまう。

この映像を見て、「スローライフ最高!ゆとりがなくなった今の社会はクソ!」なんて思ってるだけの人って、この辛さを全く理解してないんじゃないかと思えてくるのだ。

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旧態依然

この作品って、ネガティブな意味で岩波書店から関連書籍が出そうな作品なんですよね。

とりあえず新しいものは不安だからNOをつきつけるインテリ教養主義者が好みそうな気がする。インターネットは悪、仮想通貨は悪、ブロックチェーン?なにそれみたいな。最近メールを初めて使ってニュースで取り上げられた経団連の会長みたいなメンタリティの人が好みそうな作品なんですよね。

全く新しいことを勉強せずに取り残されたみたいな、そういう人がスローライフ素晴らしい!インターネットは危険だ!みたいなことを考えて、自己満足しそうで嫌なんですよね。

ネタバレしないように注意して書くと、終盤に、資本主義に揉まれて病むということの解決策として津端さんのライフスタイルを参考にする施設が出てくる。だけどそういう現状って、新しいことを取り入れようとせず、人間を酷使した結果なんじゃね?って思ってしまう。

確かにスローライフによってメンタルの修復をはかるという取り組みは素晴らしいんだけど、今の時代だと、労働者の賃金を高時給にして積極的に機械化すれば案外そういう問題解決しそうなんだけどなあ、と、思えてくるのだ。

だが、未だにそういったことを全く考えずにグチグチ文句を言ったり、デモすれば解決すると思っている輩が多い。新しいことに関して全く勉強せずに、旧態依然のシステムに依存しようとしている人が非常に多い。

スクリーンで示されるスローライフの理想形を見て、インターネット悪スマホ悪みたいなことを思っているテクノフォビアが「スローライフ最高!」と思うだけのポルノグラフィティとして機能してしまいそうなのだ。

そりゃスローライフは素晴らしい。だけど、その難易度は非常に高く、並大抵の人間には不可能。暑い中農作業しなければならないし、テレビも基本的に見ず、ストイックに行動しなければならない。

普通の人なら文明の利器について学んで有効活用したほうが豊かな生活を送ることが出来る。

だが、不勉強の結果自分のよくわからないテクノロジーが社会に浸透したことに恐怖を感じた人たちが「昔はゆとりがあった」と言ってスローライフにすがる。スローライフにすがっているはずなのに、自分が小さな頃から存在していたテレビは普通になんの疑問も持たずに見る。そしてワイドショーを見て文句を言う。クイズ番組に出てる芸能人がパニックになって常識問題を正解できなかった様をバカにする。そういった低俗な奴が、スローライフを礼賛してるんだよ。

テレビやパソコンの電磁波が身体に悪影響とかいって新しいものをとにかく否定して、昔はよかったマウンティングをして子どもをいじめるクソババアが近所にいたとか、似た感じの思想を持つ教師にメンタル的な攻撃を受けていたとか、そういう経験を持つ僕にとって、不勉強で取り残されて過去の生活にすがるような輩が好みそうな映画だという印象が強かった。

これからインターネットやブロックチェーンなどがガスみたいな存在になるってのに。津端さん夫婦ガス使ってるでしょ?料理するのにわざわざマッチとか火打ち石とか使ってないだろ?

ただ無知でビクビクしてるだけの輩が自己を正当化するためにスローライフを提唱しがちだ。新しいテクノロジーについて勉強しなければ取り残されるような時代になってきているのに、昔の教養だけにすがって生きているようにしか思えない。

この映画が絶賛一色になる理由は明らかだけど、それにはネガティブなニュアンスも含まれている気がしてならない。理想的な生活をおそるべき忍耐力で体現したような人のドキュメントを見て、人生ベストとか今年のベストワンに選んで、自己満足して終わるような輩とは関わりたくないなあと正直思った。

まとめ

これは「おもひでぽろぽろ」に関して語られることにも似ている。

田舎に実際に住んでる人や出てきた人が、あまりにもきれいに描かれた理想的な田舎暮らしを見ても、あまり心地よいとはおもわない。

ITリテラシーの低い自己を正当化するためにスローライフを志す人が、自己を正当化するかのようにこの映画を褒めているようで嫌気が差してしまう。

ボロッボロのカバンを使い続けて「環境に優しい」アピールをしてる人とか、未だにインターネットのイの字も知らないで「個人情報の漏洩が」とか言って頑なにインターネットを使わない人に辟易している自分にとって、手放しで絶賛したくない作品だった。

「人生フルーツ」は素晴らしい作品だと思うけど、こういったライフスタイルが自分にも難なくできると思いこんでるやつがほんとに嫌いだし、そういったやつが現実逃避のためのポルノグラフィティとして消化しそうなのがほんとに嫌。

まあでも津端さん夫婦やこの映画の製作者には全く罪はなくて、実際この夫婦のライフスタイルから教訓を得ることも多い。いつか関連書籍を読んでみようと思います。

 

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