宇野常寛ゼミin福岡アフタートーク・戦後70年の歴史は流行である

※当サイトにはプロモーションが含まれます。

※PLANETS CLUB会員に向けて書いたレポートです。そのためこのオンラインサロンが何か等については省略しています。

宇野常寛ゼミ遅いインターネット計画

1月14日、福岡の書店兼寺子屋、とらきつねさんで「宇野常寛ゼミ 遅いインターネット計画」が開催されたので参加してきました。


初めて宇野さんの講演を生で聞くことができたし、九州&山口のクラブ会員とも初めて顔合わせ・交流でき、とても有意義な時間を過ごせました。チキって全然宇野さんに質問等できなかったのが心残りでしたが……。

このイベントはPLANETS CLUBでも実況配信されたので、当日参加できなかったとしてもクラブメンバーならば見ることができます。

なのでクラブ会員の方で、まだこの配信を見ていない方は是非とも見てほしいのですが、一つ心残りなことがありました。

配信し忘れたアフタートークのほうが、どう考えても面白かったんですよね。

本編は宇野さんのことを今回始めて知った人向けの内容でしたが、その後サイン会を行ったあと、クラブ会員限定のアフタートークがありました。そこで宇野さんはP11の構想について語りました。

初めて聞く内容の話で、とても考えさせられるめちゃくちゃおもしろい話でした。参加してたクラブメンバーの僕含む5人全員、本編よりも面白いと思ってました。

なのに配信し忘れました。録画も録音もしていない。超面白かったあのときの内容は自分たちの頭の中に微かにしか残っていない。なのでものすごく残念な気持ちになりました。

この内容を少しでもクラブ会員にシェアしてもらいたいと思ったので、このアフタートークの中で最も面白かった「新しい日本地図」構想について、思い出せる限り書いてみます。文章中に出てくる宇野さんの発言は僕のうろ覚えです。

P11構想・新しい日本地図

戦争特集のP10に次ぐP11は都市特集になりそうだということは、クラブ会員はご存知だと思います。

その都市特集で、どのようなことを書くか考えているという宇野さん。エストニアに取材に行って電子国家特集をしても意外性のかけらもない。なにかおもしろいことがないかなという話になりました。日本国内で都市を考えた場合どうなるかという話になり、現状日本の都市問題について宇野さんはこう語りました。

田舎に住むべき人間・都市に住むべき人間

「いま日本がはらんでいる問題の一つに、田舎に住むべき人間と都市部に住むべき人間が逆になっているというのがある。」

高齢者は田舎に住んでいて、若者は都市部に住む人が多いですが、宇野さん的にはどう考えても逆のほうがいいとのこと。その理由についてこのように述べました。

「倒れて5分か10分経つまでに病院に連れて行かなければ死ぬかもしれないのに、高齢者ほど病院が近くにないド田舎に住んでいる。病院に好アクセスの都市部に住まわせたほうがどう考えてもいい」

「今都市部でバリバリ働いている若者が田舎に行ってもAmazonなどを使いこなせるのでそこまで苦労しない。」

確かにそうだ。都市部のほうが高齢者が住むのに適している。だけど全くそういったことを考えたことがなかった。人口の都市一極集中はよくないと勝手に思ってた。高齢者は都市に集中させ、代わりにネットを使いこなせる人が田舎に引っ越したほうがいい。そうすれば問題はほとんど解決できる。目からウロコが落ちました。

ではなぜ、高齢者は田舎に住みたがるのか。それは言わずもがなですが、高齢者たちが都市部に移動したがらないからです。

伝統が損なわれるから、歴史を守るために故郷に残り、都市には行きたがらない。そのため、田舎には高齢者がたくさんいて、若者は都市部に移動するという、本来真逆であるべきことが起こっています。この伝統の価値観について、宇野さんはこう述べました。

「人間が生きているうちに起こったことなんて、歴史じゃなくて、流行なんだよ。」

歴史ではなく流行

彼らが守ろうとしているのは、戦後のライフスタイル、すなわち田中角栄が推し進めたような地方の工業化であり、そもそも歴史のある伝統ではない。戦後の経済成長のためにつくられたシステムであって、それはただの流行だ。人間が育んできた長い歴史の中で、たかだか40年位続いていることだ。

地方にはそれよりももっと守るべきことがある。例えば自然や祭りなどだ。自然や祭りは何百年も前から続いている。なのに、まったくそういったことを視野に入れない政策ばかりしていると、宇野さんは語りました。そして、高千穂の例を述べました。

高千穂は九州の中でも特有の絶景スポット。普通に考えたら、高千穂の伝統を守るならば緑豊かな自然の保護を優先すべきだろう。

では、高千穂の伝統を守ろうとした結果どうなっているのか。人口を維持するために雇用を無理に拡大しようとした結果、酒造メーカーを誘致して森の中に工場を建てているのだ。

高千穂の人口は現在10000人強。どう考えてもキャパオーバーだ。昔は300人くらいの規模なのに、10000人以上無理に押し込めたから、雇用のために自然をぶち壊す羽目になっている。

300人程度の規模で育まれた昔からある伝統を、10000人の雇用のためにぶち壊しているのだ。

こういったことが起こっている。

もう一度書きます。

「人間が生きているうちに起こったことなんて、歴史じゃなくて、流行なんだよ。」

数十年の出来事を維持するために、人口をキープしようとして伝統を破壊しているのだ。キャパオーバーの田舎の人口を昔の人口に戻すべく、ある程度人を都市に移動させたほうがいい。

とはいえど、高齢者を東京や県庁所在地に全員引っ越させようとしても難しい。ここで宇野さんはあることを思いついた。

新しい日本地図

新しい日本地図を作ろう。

47都道府県ではなく、それよりも、細かに地域をグルーピングしてみよう。

そしてそのグループの中心都市に高齢者を移動させる。

という方法だ。

つまり、青森県ならば津軽ゾーンや八戸ゾーンみたいなくくりを新たに設定し、八戸に近い田舎に住んでいる人たちを八戸ゾーンの住民にする。そして、そこに住んでいる高齢者を八戸市内に引っ越させる、ということだ。都道府県だと全然文化が違う場合もあるけど、地域ごとのグルーピングならば同じコミュニティの空気感を保つことができる。

こうすれば、設備の整った都市部に高齢者を移住させやすい。

北九州周辺の田舎に住んでいる僕の家庭で考えると、小倉になるだろう。年をとれば地元を離れて小倉で生活するということになる。

この引越し先がもし、東京だったり博多だったりしたら多分成功しない。いきなり博多に行ってくださいと高齢者に言ったら反感を買うだろう。

だが、小倉に移動となると、全然心理的な負担はない。いつも行き慣れている地域に引っ越すだけだ。県というくくりだとスケールが大きすぎるけど、もっと小さなくくりを考えれば、引っ越しのハードルは低くなる。

そのために都道府県ではなく新たなグループを定義しよう。そして、その地図を真剣に考え、県や国というくくりでものごとを考えずに、道州制的な政策を考えてみようというのが、「新しい日本地図」計画です。

福岡の講演会のアフタートークで、宇野さんの中でP11の構想が決まりました

まとめ

福岡の講演会のあと、こういったアフタートークが行われました。

本編よりもこっちのほうがめちゃくちゃおもしろかったです。本編は宇野入門的な話が主でしたが、アフタートークは今まで聞いたことなくて考えさせられるテーマの話でした。正直もっと聞いていたかったです。

ほんとにあっという間のイベントでした。握手くらいさせてもらえばよかった......。

おすすめの記事