「サラゴサの写本」
その本は、見るもの全てを魅了する

「サラゴサの写本」<br>その本は、見るもの全てを魅了する

最近見たレア映画の話。

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レアというのも人それぞれだけど、僕が思っているのは、VHSでしか見られない、そもそもVHSにすらなっていないものに加えて、気軽にレンタルできないものも含んでいる。

気軽にレンタルできない上、DVDを購入すると他の映画に比べて、異様に高額に感じるような作品。1本5000円とかボックスで3本20000円とかね。

数多の監督に影響を与えた有名作なのに大金をはたかなければ見ることのできない作品。そんな映画がたくさんある。なぜかというとそれは8割方紀伊國屋書店という会社のせいなのだが…

サラゴサの写本

そんな映画の一つにポーランド映画「サラゴサの写本」がある(紀伊國屋書店から発売されている)。マーティン・スコセッシやルイス・ブニュエルなどの名監督が絶賛する作品として有名で、imdbで検索してみると8.1点。ググってもけなす人がほとんどいない。3時間ある映画なのに、長くてつまらないと書いているレビューが見当たらないし、オールタイムベスト級だと書いてる人もいるため、ものすごく気になっていた。

なにしろこのタイトルが魅力的だ。昔から評判に加え名前のかっこよさから映画を見ていた僕にとっては中二心をくすぐられる。「フレンチ・コネクション」とか「時計じかけのオレンジ」とか、中学の頃からよく見てた。

しかも監督の名前がヴォイチェフ・イエジー・ハスだ。かっけえ。もうこれは気になってしょうがない。
見る機会があったので見てみた。

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あらすじ

ナポレオン戦争時代のスペインはアラゴン地方サラゴサ。とあるフランス軍将校が、逃げ込んだ宿屋で挿絵入り大判本を発見する。その後宿屋へ入ってきた敵方のスペイン軍将校は、フランス軍将校を捕縛する代わりにその書物を翻訳して聞かせてやる。著者はスペイン軍将校の祖父であり、ワロン護衛隊の司令官だった…。
それより何十年も前のこと。シェラモレナ山脈を旅していたスペイン軍将校の祖父アルフォンス(ズビグニェフ・ツィブルスキ)は、ムーア人王女姉妹、カバラ修験者、ジプシーらと出会い、彼から奇々怪々な話の数々を聞かされる。その多様な物語群は、次第に絡まり合い、互いに関連し始めるのだった…。

簡単に説明すると、オープニングは戦闘シーンから始まる。フランスとスペインの軍が戦争をしているようだ。敵対している二人の男が、宿屋で大判本「サラゴサの写本」に見とれて、そこから本編がスタート。

「サラゴサの写本」は見るもの全てを魅了する怪奇小説だった。この本に見とれていた男を、捕虜にしようとした敵の男もこの本に夢中になった。彼は実は、この本の主人公の孫だった。

サラゴサの写本ことサラゴサ手稿とは、ヤン・ポトツキによる幻想小説。日本では国書刊行会から発売されていたようだが、絶版になっている。この本の映画化である本作では、サラゴサ手稿の大きな特徴、写本を読むという「ある人が昔体験した話を聞く」行為から物語が始まる

悪魔にとりつかれた男

一人の男がサラゴサという土地に赴いた。彼のもとに美しい従姉妹が訪れ、彼女たちに結婚をもちかけられる。彼女たちに誘惑されながら髑髏の酒杯に入った酒を飲むが、目が覚めた。悪魔が出てくることで有名なサラゴサの土地で、主人公は住民の忠告を無視し、無防備に寝てしまっていたのだ。

起きたら無数の髑髏と二人の吊るされた盗賊の死骸があった。夢だと悟り逃げ出した彼は、後に悪魔祓いにあう。「お前は悪魔にとりつかれている」と悪魔祓いは述べるが、はたして本当なのだろうか。そしていろいろな話を聞くうちに、主人公は今起きていることが現実なのか、次々と誘惑をけしかける悪魔の仕業による幻想なのか、全く判断ができなくなってしまう。

作中話の中の作中話

この映画、かなり超現実的である。
なぜかというと、会話の中の作中話があまりにも多く複雑にからみあうのだが、どう考えても口頭だけで語るのが不可能だからだ。

例えば、AがBから、自身の体験を聞くというシチュエーションを想像してみてほしい。
そしてBは知人のCから聞いた話をその中に入れてきたりする。

つまりAがBの体験談を聞いているうちに、その中で登場したBの知り合いのCの体験談を聞いているというシチュエーションである。
ここまでならまだわかると思うが、この映画はEまであるのだ。

AはBの回想の中のCの回想の中のDの回想の中のEの回想を聞くのだ。

この物語では、いろいろな話が入り組んだ結果、伏線を回収していくという伏線回収ものみたいな作品と共通した面白さもある。

しかし非常にややこしい。なにも知らずに見ていれば頭がこんがらがってくる。誰が誰なのか全くわからない。だがこの状況は、この話を聞いている主人公やその周りにいる人達と同じようなカオスを体感させるだけでなく、現実と幻覚の区別がつかなくなるこの映画の主人公と似通った体験をさせるのである。

紀伊國屋書店から発売されているBlu-rayには、ストーリーを細かく記した解説書がついてくるが、もし映画館で見たのならば、頭が破裂しそうになるだろう。

しかし 物語は混沌としているがなぜか惹きつけられる。グロテスクな映像美、サイケデリックでクラシカルな音楽が重なり合い、この映画は3時間の長尺を感じさせずに、観客を奇々怪々で幻想的な世界に誘う。

怪奇で見るもの全てを魅了するもの。それこそがこの「サラゴサの写本」なのである。

ディスクは高額ですが非常に面白い作品なので、気になった方はぜひご覧になってください。



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