アントマン&ワスプ。
期待してたよりも面白かったです。
前作はまあまあ面白いけどすごい好きって言えるような作品ではないかなって感じだったんですけど、今回は結構面白かったです。前作よりも好きです。
一言でいうと、
「新たな冒険をしているマーベルがあえて安定した映画を作ったら」
という類の作品だなって感じでしたね。
あらすじ
頼りなさすぎるヒーロー<アントマン>と、完璧すぎるヒロイン<ワスプ>──ふたりの前に、すべてをすり抜ける神出鬼没の謎の美女<ゴースト>が現れ、アントマン誕生の鍵を握る研究所が狙われる。敵の手に渡れば、世界のサイズが自在に操られてしまう!? さらに、金目当ての武器ディーラーの襲撃や、アントマンを監視するFBIの追跡も巻き込み、人や車、ビルなど全てのサイズが変幻自在に変わる“何でもアリ”の大騒動に! ユニークなパワーと微妙なチームワークで、アントマンとワスプは世界を脅かす“秘密”を守り切れるのか?
(公式サイトより引用)
アラフォーオタクと映画業界
今、80年代映画がブームだ。
80年代とか、昔の映画に影響を受けた製作者が増えたこととか、昔から映画を見てきたアラフォーオタクのほうが若年層よりも映画を見に行くことが多いため、彼らをターゲットにしたような作品が非常に多く作られるようになっていった。
それは「アトミック・ブロンド」などといったオマージュ映画が多く作られていることや、「ブリグズビー・ベア」「カメラを止めるな!」に代表される映画愛映画が流行っていることとも関連しているし、言わずもがなだがこれらの映画をミックスしたような「レディ・プレイヤー1」にも言えることである。
こういった映画を見に行くのはアラフォーのオタク世代が多い。
無論若年層や女性にも映画好きは多いが、そもそものターゲットはボンクラオタクと自称しているような人たちだ。
そのため続編映画が多く、大作で新たなキャラクターはあまり生まれていない。
「スターウォーズ」と「ブレードランナー」、ましてや「トレインスポッティング」の続編までも2017年に公開されたことからも分かる通り、新たな企画というものはあまり生まれていない。次に公開される「ザ・プレデター」もそう。既存の映画のリブートや続編が多い。
こういった作品をリアルタイムで見てきた人たちが作った、もしくは見てきた人に対して作られた作品が多く、新しいアプローチをして若年層に支持を得た大作映画はあんまりないのだ。
「テッド」の主人公、マーク・ウォールバーグをイメージしてもらえばわかると思うが、こんな感じの人をターゲットにしている。 昔から映画を見ているアラサー、アラフォー、それ以上の映画ファンに向けた作品が非常に多い。
そういった作品と同じく、マーベル・シネマティック・ユニバース(以降MCU)の映画もアラサー以上の映画ファンをターゲットに作られた作品が多いが、最近は新しい冒険をするようになった。ブランドが確立してからか、80年代的なものを少し融合させてはいるものの、今まで見たことのないような世界を築きあげている。
「ブラックパンサー」では、アフリカの国が世界で最も文明が進んだ世界を描いたし、「マイティ・ソー バトルロイヤル」では、マーベルらしくないシリアスな世界観であまり評価されていなかったシリーズを、コメディ映画として作り上げた。「ドクター・ストレンジ」以降のMCUはサイケデリックな映像にシフトし、見たこともないような世界観を描いてきた。
この前公開された「アベンジャーズ・インフィニティ・ウォー」では、マーベルとは思えない作風に変化し、見た人の多くがその衝撃に唖然としただろう。
そして本作「アントマン&ワスプ」はその衝撃を中和するかの如く、冒険ではなく安定を求めた結果楽しい世界観を作りあげていた。サイケデリックな世界ではなく、いい意味で普通の、リアルな世界を舞台にしたアクションコメディ映画だった。昔よく見たようなSFアクション映画っぽい雰囲気で、結構面白い作品に仕上がっていた。
マーベル製オタクヒーロー映画
そもそも前作「アントマン」自体、オタクが主人公で、おっさんと世間で言われるような年齢になった男の気持ちを揺さぶるように作られていた。
「40歳の童貞男」のようなコメディで脇役ばかり演じていた50目前のポール・ラッドが主演を務めることや、もともと前作はエドガー・ライトが監督する予定だったことからもわかる。ボンクラオタクがゾンビや宇宙人と戦う羽目になるオタク映画を作ってきたライトをキャスティングした理由は、「アントマン」という作品もこのような作品だからだ。世間からおっさんと言われる年齢になったボンクラオタクが、愛するもののために敵から戦う。
アイアンマンやドクター・ストレンジなどとは属性が違うヒーローというのは見ての通りなのだが、オタク向けに作られたといっても過言ではない作品なのだ。
そして続編にあたる本作でも、80年代映画で育ってきたような人たちを喜ばせるような描写が多かった。
オタクが世界を救う
マイケル・ダグラスとミシェル・ファイファーという80,90年代に活躍していたスター俳優が出ていることもそうだが、序盤にCome on Get Happy を熱唱したりすることからも、彼のボンクラっぷりが垣間見える。
この曲は「パートリッジ・ファミリー」というホームドラマのオープニング曲だが、1970年代の楽曲だ。
日本で例えれば「ひょっこりひょうたん島」とか「オレたちひょうきん族」の記憶を引きずってるみたいな感じですかね。
要はいい年こいてフラッシュ・ゴードンに熱狂している「テッド」のマーク・ウォールバーグと同じなんですよね。クマのぬいぐるみと一緒に生活しているようなオタク中年と、今回のアントマンはほぼ同じ境遇だ。加えて前科持ちでダメな父親だ。
オタクのボンクラであることを自覚しているかのような主人公が、娘のためや自らの人生をやり直すためにヒーローになるという、映画秘宝系アラフォーオタクには胸熱なドラマが展開される。今流行の、80年代映画に影響を受けたオタク向けの映画を、マーベルがあえて作ったらどうなったのかといった作品なのだ。
まとめ
と、「アントマン&ワスプ」ではなく「アントマン」シリーズの総評みたいな感じになってしまったが、個人的には前作よりもオタク的な面が露骨になった「アントマン&ワスプ」のほうが好きでした。マイケル・ペーニャも前作に引き続いて最高。全然冒険していないような安定性が逆に新鮮なエンターテイメントでした。
マーベルにしては、度肝を抜かれるようなアクションシーンは少ない。 でも、「アベンジャーズ・インフィニティ・ウォー」からその続編に続く箸休めとしては最高の出来のSFアクション映画の佳作でした。
おすすめですよ!