デジタル化された書籍の登場により、読書の方法も多様化している。紙の書籍の良さを維持しつつ、デジタル化による利便性を享受するために「自炊」を選ぶ人もいれば、利便性を最優先し、オンラインで購入可能な「電子書籍」を好む人もいる。それぞれの方法には独自のメリットとデメリットがあり、選択は個々のライフスタイルやニーズに大きく依存する。
自炊とは、自分の持つ書籍をスキャナーなどでスキャンし、デジタルデータとして保存する作業を指す。この方法では、自分の蔵書をデジタル化することで、持ち運びの利便性や保存場所の削減を図ることができる。一方、電子書籍は、すでにデジタル化された書籍をオンラインストアから購入し、専用のアプリケーションやデバイスを使って読む形式である。これにより、物理的な書籍の管理から解放され、どこでも簡単にアクセスできる利便性がある。
この記事では、自炊と電子書籍の比較を通して、それぞれの方法の特徴や利点、欠点について詳述する。これにより、読者がどちらの方法を選ぶべきかを判断するための材料を提供する。
Contents
自炊 vs 電子書籍の対比
1.保存場所と管理
まず、自炊と電子書籍の最大の違いの一つである「保存場所と管理」について見ていこう。
書籍の保存場所と管理は、自炊と電子書籍の大きな違いの一つである。それぞれの方法には、保存場所の確保や管理の手間に関して、異なる利点と欠点が存在する。
自炊
自炊では、書籍をスキャンしてデジタルデータとして保存する。この方法では、データの保存場所をユーザー自身が管理する必要がある。具体的には、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などのストレージデバイスを用意し、スキャンしたデータをそこに保存する形となる。以下に、自炊のメリットとデメリットを詳述する。
メリット:
保存場所を自分で管理できるため、データの整理やカスタマイズが自由に行える。ファイル名の付け方やフォルダの構成など、個人の好みに合わせて管理が可能である。
自炊によってデジタル化したデータは、自分だけのライブラリとして独自に管理できるため、外部の影響を受けにくい。
デメリット:
データの保存場所を確保するために、ストレージデバイスを用意する必要がある。大量の書籍をデジタル化する場合、膨大なストレージ容量が必要となることがある。
定期的なバックアップが必要である。データの消失を防ぐために、外付けハードディスクやクラウドストレージなどを利用して、定期的にバックアップを行う必要がある。
HDDやSSDの故障によるデータ損失のリスクが存在する。物理的なストレージデバイスは故障する可能性があり、故障した場合にはデータが失われる恐れがある。
電子書籍
電子書籍は、オンラインストアで購入したデジタル書籍をクラウドストレージに保存するため、物理的な保存場所の確保が不要である。クラウドストレージにより、データはインターネット経由でアクセス可能となり、どのデバイスからでも利用できる。以下に、電子書籍のメリットとデメリットを詳述する。
メリット:
保存場所の心配が不要である。クラウドストレージによりデータが管理されるため、ユーザー自身がストレージデバイスを用意する必要がない。
インターネット接続さえあれば、どのデバイスからでもアクセス可能である。スマートフォン、タブレット、パソコンなど、複数のデバイスで同じ書籍を読むことができる。
データのバックアップがクラウド側で自動的に行われるため、データ損失のリスクが低い。クラウドストレージは複数のサーバーにデータを分散保存するため、耐障害性が高い。
デメリット:
プラットフォーム依存のリスクがある。購入した書籍は特定のプラットフォームに依存しており、そのプラットフォームが提供するサービスや機能に制約されることがある。
購入した書籍が削除される可能性がある。電子書籍のプラットフォームによっては、契約や著作権の問題で書籍が削除されることがある。この場合、購入者が再度アクセスできなくなるリスクがある。
比較すると
自炊と電子書籍の保存場所と管理には、それぞれ異なる特徴と課題がある。
自炊は、データの完全な管理とカスタマイズが可能である一方、データの保存とバックアップに手間がかかる。電子書籍は、クラウドストレージによる利便性が高い反面、プラットフォーム依存のリスクが伴う。
どちらを選ぶかは、個々のニーズやライフスタイルに合わせて検討する必要があるが、楽なのは明らかに電子書籍だろう。自炊は管理が本当に面倒だ。HDDが消えたら本がおじゃんになってしまうし、管理が大変。ただ、電子書籍は、購入したのにいつの間にか消滅している日が来るかもしれない。
2. 利便性
書籍の利用方法における利便性は、読書体験を大きく左右する要素である。自炊と電子書籍の利便性について、それぞれの特徴を詳述する。
自炊
自炊は、自分の持っている書籍をスキャンしてデジタルデータとして保存する方法である。これにより、書籍の持ち運びや利用方法において、以下のような利便性が得られる。
メリット:
自由なデジタル化:自炊によって、自分の好きな書籍を自由にデジタル化できる。これにより、絶版になっている書籍や特定の書店でしか手に入らない書籍もデジタル化して持ち歩くことができる。
特定のページだけをデータ化できる:必要なページだけをデジタルデータ化できるため、資料として特定の部分だけを参照したい場合に便利である。例えば、参考書の特定の章だけを持ち運びたい場合などに有効である。
カスタマイズ可能:自炊データは自分で管理するため、ファイル名やフォルダの構成を自由にカスタマイズできる。また、PDFや画像形式など、用途に応じて最適な形式で保存することが可能である。
デメリット:
スキャン作業の手間:書籍をスキャンする作業には時間と手間がかかる。大量の書籍を自炊する場合には、多くの時間と労力が必要となる。
初期費用:スキャナーや専用のソフトウェアを購入するための初期費用がかかる。高性能なスキャナーや編集ソフトを使用する場合、その費用はさらに増加する。
技術的な知識が必要:スキャンやデータの管理には、ある程度の技術的な知識が必要である。特に、画像の補正やPDF化などの作業には専門的なスキルが求められることがある。また、コツを掴む前に自炊したデータは容量が多かったり縦線が入っているページが多かったりする。
電子書籍
電子書籍は、すでにデジタル化された書籍をオンラインストアから購入し、専用のアプリケーションやデバイスで読む方法である。これにより、以下のような利便性が提供される。
メリット:
簡単な購入・ダウンロード:電子書籍はオンラインストアから簡単に購入・ダウンロードできる。書店に行く必要がなく、自宅や外出先からでもすぐに書籍を入手できる。
多機能な読書アプリ:電子書籍を読むためのアプリケーションには、しおり、メモ、検索機能など、便利な機能が豊富に搭載されている。これにより、読書体験がより効率的かつ快適になる。
複数のデバイスで同期:購入した電子書籍は、スマートフォン、タブレット、パソコンなど、複数のデバイスで同期して読むことができる。これにより、どのデバイスでも同じ書籍にアクセスできる利便性がある。
デメリット:
売ってないと買えない:紙の本しか発売されていない本は、電子書籍版が発売されるまで読めない
フォーマットの制限:電子書籍は提供されるフォーマットが決まっており、自由にカスタマイズすることが難しい。例えば、ページの順序を変更したり、特定の形式で保存したりすることは基本的にできない。
特定のページだけの参照が難しい:電子書籍では、書籍全体を持ち運ぶことになるため、特定のページや章だけを持ち運ぶことが難しい。これにより、特定の資料としての利用が制限される場合がある。
比較すると
自炊と電子書籍の利便性には、それぞれ異なる特徴がある。
自炊は、書籍の自由なデジタル化やカスタマイズが可能である一方、作業の手間や初期費用がかかる。電子書籍は、簡単な購入・ダウンロードや多機能な読書アプリによる利便性が高いが、自由度は低い。
電子書籍は本と同じで、ページの順番を入れ替えることはできない。そうする必要はないと思っている人も多いだろう。だが、自炊をする際に、順番を入れ替えてわかりやすくできるのは地味にありがたい。一番最後に載っているおまけとしてつけられたセクションが一番その本の中で重要だと思ったのなら、一番最初に持ってくることもできる。これは意外と便利な点だ。
また、自炊は電子書籍が発売されていないような本も電子化でき持ち運べるというメリットもある。ただ、スキャンの手間がかかる。
3.コスト
デジタル化や購入にかかるコストは、自炊と電子書籍の選択において一番重要な要素だろう。
先ほどとかぶるところもあるが、以下に、それぞれの方法にかかるコストについて詳述する。
自炊
自炊は、書籍をスキャンしてデジタルデータとして保存する方法である。この方法には、初期投資や維持費用がかかる。
メリット:
安価な古本の利用:自炊では、ブックオフや駿河屋などで安く購入した古本や、無料でもらった書籍をデジタル化することができる。これにより、新品書籍を購入するよりもコストを抑えることが可能である。また、メルカリなどで裁断済の本なども売っている場合がある。これを使うともっと安く自炊ができる。
長期的なコスト削減:一度デジタル化した書籍は、物理的な劣化がないため、長期間にわたって利用できる。これにより、書籍の再購入や劣化による買い替えのコストを削減できる。
デメリット:
初期費用の負担:スキャナーや専用のソフトウェアを購入するための初期費用がかかる。特に、高性能なスキャナーを使用する場合、その費用はさらに増加する。具体的には、スキャナーの価格は数千円から数万円、裁断機の価格は数千円から数万円程度かかる。
スキャン作業の手間:書籍をスキャンする作業には時間と手間がかかる。特に、大量の書籍を自炊する場合には、多くの時間と労力が必要となる。これにより、時間的コストも発生する。
メンテナンス費用:スキャナーや保存用のストレージデバイスのメンテナンスや買い替えが必要になることがある。特に、ストレージデバイスの故障や容量不足に対応するための費用が発生する。
電子書籍
電子書籍は、すでにデジタル化された書籍をオンラインストアから購入し、専用のアプリケーションやデバイスで読む方法である。この方法には、購入費用や利用にかかるコストが発生する。
メリット:
セールや割引:電子書籍は頻繁にセールや割引が行われるため、定価よりも安く購入することができる。特に、大手の電子書籍ストアでは、定期的にキャンペーンが実施され、多くの書籍が割引価格で提供される。
無料書籍の利用:一部の電子書籍ストアでは、無料で提供されている書籍も多く存在する。これにより、コストをかけずに多くの書籍を楽しむことができる。
物理的な保存場所が不要:電子書籍はクラウドストレージに保存されるため、物理的な保存場所を確保する必要がない。これにより、書棚や保管スペースのコストを削減できる。
デメリット:
デバイスの費用:電子書籍を読むためには、専用のデバイス(Kindle、Koboなど)やアプリケーションをインストールしたスマートフォンやタブレットが必要である。これにより、デバイスの購入費用やメンテナンス費用が発生する。
存在を忘れる:普段使わない電子書籍を取り扱っているサービスで本を購入しても、買ったことを忘れることが多い。そのため、買ったのに結局読まないということも多々ある。
比較すると
自炊と電子書籍のコストにも、それぞれ異なる特徴がある。
自炊は、初期費用がかかる一方で、安価な古本の利用や長期的なコスト削減が可能である。電子書籍は、セールや無料書籍を利用することでコストを抑えられるが、デバイスの費用や購入した書籍の存在を忘れるリスクがある。
持っている本の存在を忘れるというのは、自炊でもたまにあることなのだが、自炊の場合は保存している場所を統一しておけばあまりそういうことは起こらない。だが、いろいろなサービスがある電子書籍の場合は、結構忘れることが多い。Kindleをよく使う僕にとって、他のサービスで購入したものは失念することが多く、例えばU-NEXTポイントで購入した本とかは、「確かにこれ買ってたけど読まなかったな」と思うような、一年以上手につけていなかったものも多い。そういうこともある。
まとめ
自炊と電子書籍のどちらを選ぶべきかは、個々のライフスタイル、ニーズ、そして読書習慣によって大きく異なる。それぞれの利点と欠点を総合的に比較し、自分にとって最適な方法を選ぶことが重要である。
自炊のメリットとデメリットの総括
自炊は、自分の好きな書籍を自由にデジタル化できる点が大きな魅力である。絶版になっている書籍や特定の書店でしか手に入らない書籍もデジタル化して持ち歩ける。また、データのカスタマイズも自由であるため、自分の読書スタイルに合わせて管理することができる。
しかし、自炊には初期費用がかかるというデメリットがある。スキャナーや専用ソフトウェアの購入費用、そしてスキャン作業にかかる時間と手間を考慮する必要がある。
また、データの保存場所を確保し、定期的なバックアップを行うためのメンテナンス費用も発生する。これらの手間と費用をかける価値があるかどうかを判断することが重要である。
電子書籍のメリットとデメリットの総括
電子書籍は、オンラインストアから簡単に購入・ダウンロードできる利便性が大きな魅力である。
書店に行く必要がなく、自宅や外出先からでもすぐに書籍を入手できる。また、読書アプリの多機能性により、しおり、メモ、検索機能などが利用でき、読書体験を効率的かつ快適にする。さらに、クラウドストレージに保存されるため、物理的な保存場所を必要とせず、複数のデバイスで同期して利用できる利便性も高い。
一方で、電子書籍には売ってないと買えないというデメリットがある。絶版書籍でも手に入れれば電子化できる自炊に対して、発売されないと読めない。紙の本しか発売されていない本も、読むことができない。また、普段使わない電子書籍を取り扱っているサービスで本を購入すると、買ったことを忘れてしまうことが多く、その結果として購入した書籍を読まないという事態が発生することもある。
結論
自炊と電子書籍の選択は、一概にどちらが優れているかを判断することは難しい。それぞれのメリットとデメリットを考慮し、自分の読書スタイルやニーズに合った方法を選ぶことが重要である。
もし、絶版書籍や特定の書籍をデジタル化したい、自分の好みに合わせてデータをカスタマイズしたいという場合は、自炊が適しているかもしれない。自分でスキャン作業を行う時間と手間を惜しまないのであれば、自炊によって得られる利便性や自由度は大きい。
一方で、手軽に書籍を購入し、複数のデバイスで同期して利用したい場合や、読書アプリの便利な機能を活用したい場合は、電子書籍が適している。特に、セールや無料書籍を利用することで、コストを抑えながら多くの書籍を楽しむことができる。
最終的には、どちらの方法が自分にとって最も快適で便利かを見極め、適切な選択をすることが大切である。自炊と電子書籍の両方を併用するのもおすすめだ。