ドルビーシネマとドルビーアトモスの違いを徹底解説。
映画鑑賞の体験を一変させる劇場に、ドルビーシネマとドルビーアトモスがある。
これらの技術は、それぞれ映像と音響の面で映画体験を飛躍的に向上させるものであるが、その違いを理解していない人は意外と多い。
この記事では、ドルビーシネマのヘビーユーザーの僕が、それぞれの違いを徹底解説する。僕はドルビーシネマで映画を20本以上は見ている。Tジョイ博多にある最寄りのドルビーシネマだけでなく、東京・さいたま・横浜・名古屋・大阪・京都にある劇場でも、ドルビーシネマで映画を見たことがある。ドルビーアトモスでも見たことがある。そんな僕が、この2つの劇場の違いを解説する。
結論から言うと、「ドルビーアトモス」とドルビービジョンを採用しているIMAXのような劇場が、ドルビーシネマであり、「ドルビーアトモス」という音響技術を用いた映像体験ができるのが、ドルビーアトモスである。
この記事では、まずドルビーアトモスの技術と特徴を解説し、その後にドルビーシネマの詳細を紹介する。両者の共通点と違いを理解した上で、どちらの技術を選ぶべきかの指針も提供する。ドルビーシネマとドルビーアトモスの違いは映画ファンは知っておくべきなのでぜひ最後まで読んでいただきたい。
Contents
ドルビーアトモスとは
ドルビーアトモスは、ドルビーラボラトリーズが開発した革新的な音響技術である。この技術は、映画館や家庭用シアター向けに設計されており、従来のサラウンドサウンドとは一線を画する音響体験を提供する。
ドルビーアトモスの最も革新的な点は、音をオブジェクトとして扱うことである。従来のサラウンドサウンドシステムでは、音は特定のスピーカーに割り当てられていた。しかし、ドルビーアトモスでは、音の位置や動きを自由に設定できるため、音が観客の周囲を動き回るようなリアルな体験が可能となる。たとえば、ヘリコプターが頭上を飛び回るシーンでは、音が実際に観客の頭上を移動するように感じられる。これにより、観客はまるで映画の中にいるかのような没入感を味わうことができる。この多次元サウンドは、アクションシーンや戦闘シーンなどで特に効果を発揮し、映画の臨場感を大幅に高める。
ドルビーアトモスは、音の動きを非常に精密に再現することができる。音の位置情報が詳細に設定されているため、音が画面上の動きと完全に一致する。たとえば、車が画面左から右へと移動するシーンでは、音も同様に左から右へと移動する。この精密な音の動き再現により、観客は映画の世界に引き込まれやすくなる。
ドルビーアトモスの導入によって、映画館や家庭用シアターの音響体験が大幅に向上する。従来のサラウンドサウンドシステムに比べて、音の定位や動きが格段にリアルになり、観客はより深い没入感を味わうことができる。ドルビーアトモスは、特にアクション映画やSF映画、ホラー映画などでその効果を最大限に発揮する。
ドルビーアトモスは、単なる音響技術の進化にとどまらず、映画鑑賞の概念を根本から変える技術である。
つまり、通常の映画よりも音響に力を入れているものが、ドルビーアトモスだ。
次に、ドルビーシネマについて詳しく解説し、ドルビーアトモスとの違いや共通点を探っていく。
ドルビーシネマとは
ドルビーシネマは、ドルビーラボラトリーズが提供するプレミアム映画鑑賞体験である。
プレミアム鑑賞で一番メジャーなものはおそらくIMAX・IMAXレーザー・IMAXレーザーGTなどがあるが、わかりやすく言うと、ドルビーシネマはドルビーがやっているIMAX的なもの、である。
高コントラストと鮮やかな色彩を特徴とし、映像の美しさに重点を置いている。ドルビービジョンによるHDR映像がその最大の特徴であり、映画鑑賞者に圧倒的な視覚体験を提供する。
1. ドルビービジョン・迫力のある映像体験
ドルビーシネマの大きな特徴の一つは、「ドルビービジョン」によるHDR映像である。この技術により、映像のコントラストと色彩が飛躍的に向上している。特に黒の表現が非常に優れており、通常のスクリーンでは不可能な深い黒を再現することができる。
これが、こうなる。
これはスマホの画面などでは分かりづらいと思うが、真っ暗にすると全然違う。
このように、「完全な黒」を表現出来るのが、ドルビービジョンの特徴だ。
黒が非常に鮮やかで映像が驚くほど美しい。普通のスクリーンとは全く異なり、黒の表現が通常のスクリーンと比較にならないほど優れている。
画面が大きくて鮮やかなIMAXをも超えており、この画質でずっと映画を見たいと思わせるような映画体験ができる。
いつも通りの映画を見ているのに、美しすぎて見たことがない映像に感じられる。暗転するシーンなどでは、完璧な黒を再現する。普通の映画館で見る暗転が明るく感じるほど、真っ暗な映像で映画を見ることができる。
また、ドルビーシネマはIMAX同様に、大型のスクリーンを採用している。映像の美しさと相まって、視覚的な迫力が一層増している。映画鑑賞者は、まるで映画の中にいるかのような臨場感を味わうことができる。
2.ドルビーアトモス
ドルビーシネマでは、音響システムも通常の劇場よりもアップグレードされている。
ドルビーアトモスと呼ばれるシステムが採用されており、立体的な音響体験が可能だ。映画のシーンに応じたダイナミックな音響を楽しむことができる。
ドルビーシネマはおすすめ?
ドルビーシネマは基本的にIMAXと似たような要素を持っているが、個人的には、IMAXよりも好きでドルビーシネマで観ることが多い。なぜかというと、先述の映像・音響が素晴らしいからだ。
ドルビービジョンによるHDR映像は、IMAXとは違う意味での美しさがすごい。特に黒の表現が素晴らしく、通常のスクリーンでは再現できない深い黒を実現している。
真っ黒なスクリーンに映し出される映像は、まるで実物を見るかのようなリアリティを持つ。
また、音響面でも、ドルビーシネマはIMAXよりも優れていると感じる。振動が、体に感じるような音響を体験できるのは、ドルビーシネマだと感じる。
『テネット』をTジョイ博多→キャナルシティ博多(IMAXレーザー)で間髪いれずに見たときにそう思った。僕はドルビーシネマのほうが好きだ。
ドルビーシネマで映画を鑑賞すると、映像の美しさと音響の素晴らしさに感動する。特にドルビービジョンの黒の表現は、一度体験すると通常の映画館では満足できなくなるほどの衝撃を与える。僕と同じように、IMAXやIMAXレーザーよりも、ドルビーシネマの方が好きだという意見も多い。
ドルビーアトモスとドルビーシネマの違い
さて、ドルビーアトモスとドルビーシネマについて解説してきたが、違いはおわかりいただけただろうか。
ドルビーアトモスとドルビーシネマは、どちらも映画鑑賞体験を向上させるための技術であるが、そのフォーカスする部分には明確な違いがある。
ドルビーアトモス
ドルビーアトモスは、ドルビーラボラトリーズが開発した先進的な音響システムである。ドルビーアトモスを導入している劇場では、音がオブジェクトとして扱われ、空間内を自由に移動することで、立体的でダイナミックな音響体験が提供される。
この技術により、観客は映画の中にいるかのような没入感を味わうことができる。
ドルビーシネマは、ドルビーアトモスの音響技術に加え、ドルビービジョンという映像技術を兼ね備えたプレミアム劇場である。
ドルビービジョンは、HDR(ハイダイナミックレンジ)技術を駆使し、非常に高いコントラスト比と鮮やかな色彩を実現する。
特に「完全な黒」を表現する能力が優れており、これにより映像の深みとリアリティが大幅に向上している。
ドルビーシネマのスクリーンで暗転するシーンなどでは、完璧な黒が再現されるため、通常のスクリーンでは味わえない視覚的な没入感が得られる。また、ドルビーシネマでは、映画の上映前にテンションを高めるデモンストレーション映像が流れ、その映像美が際立つ。
つまり、
ドルビーアトモスという音響技術単体で映画を観るのがドルビーアトモスで、ドルビーアトモス含め映像面も通常の劇場よりもアップグレードしたものが、ドルビーシネマである。
その他の違い
ドルビーシネマのほうが明らかに優れていることが、お分かりいただけただろう。
ただ、ドルビーシネマのほうが優れている分、高い。劇場によるが、1000円程度の課金のイメージだ。
だが、ドルビーアトモスでは数百円、そんなに高くない。
また、劇場数もドルビーアトモスのほうが多い。ドルビーシネマは2024年7月現在では、全国で10しかない。だが、ドルビーアトモスに対応した劇場は、32館、40スクリーンあるとのことだ。(公式サイト情報)
ドルビーシネマは全国の中でも人口の多い都市にしかないが、ドルビーアトモスなら地方都市にある場合が多い。そんなイメージだ。
また、ドルビーアトモスを採用している劇場のスクリーンはかなり大きい。
TOHOシネマズのTCXや、各劇場で最も大きなスクリーンなどで採用しているので、「迫力あるスクリーン」&「ドルビーアトモス」で映画を楽しめる。
つまり、
ドルビービジョン(黒の美しさが印象的な映像)×ドルビーアトモス(極上の音響)×大スクリーン
が売りのドルビーシネマと比較すると、ドルビーアトモスで見る映画は
ドルビーアトモス(極上の音響)×大スクリーン
というような感じになる。
映像は普通であるものの、「ドルビーアトモス」の音響で大スクリーン(TOHOのTCXなど)の劇場で見れば、数百円でジェネリックドルビーシネマとも言えるような、迫力ある映画体験ができる。
まとめ
ドルビーアトモスは、音響面での究極の映画体験を提供するが、ドルビーシネマはその音響体験に加え、視覚面でも最先端の技術を提供する。
ドルビーシネマの劇場では、音と映像の両方が一体となった究極の映画体験を味わうことができるため、映画鑑賞をより深く楽しみたいならば、ドルビーシネマが明らかに優れた選択肢である。
ただ、劇場数が少ない。大都市近郊に住んでいないと、なかなか見に行けないというのがデメリットだ。
対してドルビーアトモスの劇場は、ドルビーシネマよりも圧倒的に多い。地方都市なら近くにある場合が多い。また、ドルビーアトモスを採用しているような劇場は、大スクリーンで映画を観ることができる。
ドルビービジョンはついてこないが、「ドルビーアトモス」で迫力あるスクリーンで見れるため、ジェネリックドルビーシネマのような映像体験ができる。なので、ドルビーシネマが近くになくてドルビーアトモスの劇場が近くにある人は、こちらでもいい。
ただ、ドルビーシネマが近くにあるなら、一度ドルビーシネマで見てみることをおすすめする。
映画の視覚と音響の両方を最大限に楽しみたいならば、ドルビーシネマが明らかに最良の選択肢だ。映画館での体験を重視する映画ファンなら、ぜひ一度ドルビーシネマを体験してみてほしい。
その圧倒的な映像美と音響体験が、映画鑑賞の新しい基準となることは間違いないだろう。