
先日話題になったツイート。バンクシーがまたやったらしい。
ロンドンのオークションに出されたバンクシーの絵が1億七千万円で落札されたが、落札後にオークション会場内でその絵が自殺したらしいな。額縁にシュレッダーが仕込まれていたらしい。 pic.twitter.com/P0SEAoeq3a
— ヤス Farid☪︎ (@Yasu9412) 2018年10月6日
バンクシーの描いた絵画が、オークションで落札された瞬間シュレッダーにかけられて消滅したようだ。
実に彼らしいニュースだ。
Contents
バンクシーのシュレッダー裁断事件
英国の覆面アーティスト、バンクシーの絵画が5日、競売大手サザビーズのオークションで落札された直後に額縁の仕掛けで破壊された。サザビーズの幹部は報道発表で、「我々はバンクシーにまんまとやられたようだ」と述べた。
作品は、ハート型の赤い風船に手を伸ばす少女を描いたバンクシーの代表的なモチーフ。ロンドンでオークションにかけられ、140万ドル(約1億5000万円)で落札された。
CNN.co.jpから引用
バンクシーは自身のInstagramに「破壊の衝動は、創造的でもある」というピカソの言葉と共に、オークション会場で撮影された動画を投稿。「オークションで競売にかけられることに備えて、作品の中に数年前、シュレッダーを潜ませていた」と明かした。
ハフィントンポストから引用
オークションで140万ドルの値がついていた絵画にシュレッダーが隠されていた。落札された瞬間シュレッダーにかけられ周囲は唖然。みんながびっくりしている姿をバンクシーはインスタにあげたとのこと。
このツイートは1万を超えたリツイートがされていたが、そもそもバンクシーという人物を今回初めて知った人も多いと思う。日本ではあまり知られていないアーティストのため、「バンクシー?誰?」と思った人も多いだろう。
バンクシーとは、最も世界で影響力のある覆面アーティストだ。
バンクシーとは何者なのか
バンクシーは、イギリスのストリートアーティストだ。
プロフィールはほとんど明かしておらず謎。なぜなのかというと、やっていることが非合法だからだ。捕まってしまうため、顔、素性、本名を明かしていない。
彼がやったこととして、大英博物館で勝手にゲリラ展示をしたことがあげられる。美術館に忍び込んで勝手に展示をしたのだ。
これは、アメリカなどでもニュースで話題になり、今年公開された「オーシャンズ8」でもちょっとネタにされていた。
また、もう一つ有名なものに壁を乗り越える少女の絵があげられる。
今回ニュースになったシュレッダーで自壊したアートと全く同じような作品で、今後彼のモチーフになるような作品だ。
パレスチナとイスラエルの間の分離壁に、少女が風船で壁を飛び越えるアートを描いた。警備兵から威嚇射撃されながらも彼は行動した。
※この壁について描かれた映画に「オマールの壁」という作品がある。最近見たけど非常によく出来た作品だったのでおすすめ。
また、彼の作品の中で日本でもちょっと話題になったものに、ディズマランドがある。
あのテーマパークと名前が似ているが、dismal=陰気という名前が掲げられている暗黒遊園地だ。
焼けただれたシンボルの城に死んだ表情のキャスト。川に沈んだ警察車両など、殺風景なテーマパークだ。
こういった社会風刺アートで有名なバンクシーは、とても名の知れたアーティストであるため、オークションで彼の作品が出品されるとバカ高い金額になったりする。そして彼自身は、あんなガラクタを、あんなバカ高い金額で買うなんて頭がおかしいと思っている。
それは今回のシュレッダーアートにも共通している。オークションでバカ高い値段がつけられ取引されたことを嘲るようにシュレッダーを仕込んだのだ。
そんなバンクシーが監督した映画がある。その作品、「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」は、ドキュメンタリーなのにめちゃくちゃ面白い、おそろしくよく出来た怪作だ。
そして、先日話題になったシュレッダーアートと、テーマが非常に似ている。
バンクシーの監督した映画
「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」
イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ。タイトルの意味するものはなんだろう。お土産屋を通ったあとの出口。美術館によくあるやつだ。
美術館の出口あたりにあるおみやげコーナーでは、ペンやファイル、キーホルダーなどが売られている。そしてそこでクリエイターや美術館はお金を稼いでいる。
このタイトルが意味しているものはなんだろう。アートと商業主義だ。
「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」あらすじ
この映画、ドキュメンタリーなのに非常に奇天烈なあらすじなのだ。ざっくりいうとこんな感じだ。
ティエリー・グエッタという男がいた。
起きている間は片時もビデオカメラを離さないほどのカメラマニアの彼は、いとこのグラフィティアーティスト、インベーダーに会ったことから、ストリート・アートにのめり込む。ティエリー自身、なんの変哲もない古着屋経営者で、アートに関して無知だったが、アーティストと交流していくうちに顔が広くなっていった。
そして彼は超大物、バンクシーにまでたどり着いた。ティエリーはバンクシーからストリート・アートを題材にしたドキュメンタリーを撮ることを勧められる。そしてティエリーは、ドキュメンタリー作品「ライフ・リモート・コントロール」を製作することになる。そして作品は完成した。
だが、その映像は見るに耐えなかった。ティエリーにはセンスが絶望的に無かったのだ。
こんな映像を世に出せないと思ったバンクシーは、ティエリーに提案した。「代わりにお前を主人公にした作品を俺が監督してやるよ。」と。
このあらすじを読んで、どんな内容かわかっただろうか。
センスのないおっさんを主人公にバンクシーが撮ったドキュメンタリーなのだ。
アートって一体何なんだ?
この作品について、あまり内容を書きたくない。
かなり衝撃的な展開をするため、まず見てほしいのだ。
ただ間違いなく言えることは、映画を見た後、価値観がぶっ壊れる。
アートとはなんなんだ?自分がほんとに好きだと思っているものは、ほんとに好きなものなのか?と自問せざるを得なくなる展開を迎える。何も調べずに見てほしいが、ほんとにびっくりする展開が待っている。
僕ってAmazonとかFilmarksのレビューで、愚民が簡単に星ひとつとかつけているさまを見るのが反吐が出るほど大嫌いなんですけど、そういうことです。
簡単に映画に星を1つとか5つとかつけてるけど、果たしてお前らに正当なジャッジなんてできるのか?
お前らそんな偉そうにしてるけどジャッジってそんなに簡単じゃないからな。ということを観客に突きつけるのだ。
この作品を見て考えてほしい。
ちゃんと自分は正確に判断できているのだろうか。
みんなが否定した作品は簡単にゴミ扱いする。なのに、ゴミみたいな作品だとしても、有名アーティストの作品だったりバカ高いものであれば大金をはたいてありがたがる。
こんな奴らを嘲笑するかのようにバンクシーは作品を作った。
これは、お前らバカなんじゃねえの?というバンクシーからのメッセージだ。
ここまで人を惹きつけるドキュメンタリー作品を見たことがない。
バンクシーという人物がどんなアーティストなのか知らなくても楽しむことができる、ドキュメンタリー映画史上に残る傑作だ。
今回の件でバンクシーを知った人も、そうでない人も、見られていない方はぜひご覧になってください。
この記事を読んだら何も検索したりとかせずに、まず見てください。
宇多丸さんのラジオでの評論がめちゃくちゃ面白くてわかりやすいのでおすすめです。見終わった後に是非お聞きになってください。