「インサイド・マン」

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インサイド・マン (字幕版)

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Amazonプライムで配信されてたから見たけど面白かった。

あらすじ

ダルトン・ラッセル率いる4人の銀行強盗グループが、白昼のマンハッタン信託銀行を急襲、従業員と客を人質に取り立てこもる。事件発生の連絡を受け、ニューヨーク市警のキース・フレイジャーとビル・ミッチェルが現場へ急行。しかし、周到な計画のもと俊敏に行動する犯人グループを前に、フレイジャーたちも容易には動きが取れず膠着した状態が続く。一方、事件の発生を知り激しく狼狽するマンハッタン信託銀行会長のアーサー・ケイスは、やり手の女性弁護士マデリーン・ホワイトを呼び出すと、ある密命を託し、現場へと送り出すのだった。(Wiki参照)

2006年・アメリカ
監督:スパイク・リー
出演:デンゼル・ワシントン、クライヴ・オーウェン、ジョディ・フォスター

この映画、中学の時BSで放送してたのを録画してみたことあったんだけど

さっぱりわからなかった。

後半からストーリーがわからなくて見るのをやめた記憶がある。

でも今回久々に見たら全然意味不明じゃなかったし、

見終わったあとには爽快感あふれる知的なエンタメだと感じた。

ネットにはわけのわからない映画という人もちらほらいるが、

その人たちは全然集中してみてなかったのか

大人なら知ってて然るべき一般常識を知らないかのどちらかだ。

中学の時の僕はたぶんどっちもだ。

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見どころ

最近「イヤなやつと思ってた人が実はいい人でした」系の映画ばかり

見てるような気がするのだが、この作品もそんな感じだ。

強盗犯がめちゃくちゃ頭がよくて魅力的だ。

作中に伏線がうまく張り巡らされているが、

この犯人はただ大金を手にするために銀行を襲った狂人ではないのだ。

この魅力的な役を演じるクライヴ・オーウェンの好演が見どころ。

勿論デンゼル・ワシントンもいいんだけど。

またこの映画、

「銀行強盗と警官の戦い」というあらすじを根本的に覆すようなストーリー展開をする。

サスペンスではあるが全く違う類のサスペンスになってくるのだ。そこが面白い。

スパイク・リーらしさ

本作の監督、スパイク・リーといえば人種差別問題、

とりわけ黒人差別問題を扱った作品を多く製作している。

「マルコムX」の監督ということしか知らなかった中学の僕が

そんなことを知る由もなくて、全然そんなこと考えずに鑑賞していたと思うのだが、

今回は様々な場所に問題提起のピースがちりばめられていることが分かった。

ターバンをした男性が取り押さえられたり、

スぺ公と移民を揶揄する白人警官が出てきたりするのは言わずもがな。

その中でもこの映画で最も印象的なのは

携帯ゲーム機で遊ぶ黒人の8歳の少年が出てくるところだ。

子どもはグランド・セフト・オートのようなゲームを遊んでいる。

銀行強盗とか殺人をすればするほどポイントが高くなると嬉々として少年は語る。

それを見たラッセルは「よくない」とつぶやく。

このシーンは「実はこの犯人は金儲けのために人を殺すような狂った悪人ではない」

というヒントにもなっているのだが、

このシーンを見た中学当時の僕はゲーム規制派の説教のように感じた。

今思えばとんだ勘違いだ。

ゲームの画面を見てみると、このゲームの主人公は黒人だ。

そして殺されるほうも黒人だ。

黒人がギャングとして生き、犯罪に手を染め金儲けするゲームなのだ。

スパイク・リーはこのシーンを付け加えることでそういった生きかたを否定しているのだ。

日本で生きる在日韓国人などのマイノリティがヤーさんになるのと同じだ。

差別によって就職が難しい人にとってその生き方は普通に就職するよりも楽だ。

しかしこの生き方は、ただでさえ起きている差別を拡張するだろうし、

金を手に入れて着飾ったところで冷笑されるのは変わらない。

子どもは事情聴取の時には相手に「ボケ」とカッコつけていう。

完全にゲームに出てきたようなギャングスタを目指しているのだ。

50セントの言葉を引用し、犯罪に手を染め「ワル」になる生き方。

黒人親子の何気ない日常にこのゲームを組み込むことで問題提起してるのだ。

暴力描写が過激だから悪影響とか、そんな無知で保守的な規制派の説教ではない。

無論暴力ゲームによって殺傷事件が起こると決めつけてはならない。

「恋愛ゲームばかりしてるのに恋愛できない」でそんな考えは論破できる。

しかし裕福でない黒人にとってその生きかたは隣り合わせだ。

一番なる危険性のある、なってはならない存在への誘惑がこれほどまで近く、

子どもにも浸透してるということを示しているのだ。

「ギャングスタラップは現代のミンストレル・ショーなんだ」

【(最も危険なアメリカ映画,町山智浩著)より】

と発言するスパイク・リーらしい問題提起だ。

調べてみて気づいたけど、この映画には一回ボーッと見ただけでは気づかない伏線が多い。

それがこの映画がわかりずらいと言われる所以か。

何度も見るとより理解が深まるだろう。

だがその伏線を見落としていても一つの筋をちゃんと理解してれば

モヤモヤは残らずラストはスッキリする。知的な痛快作だ。

おすすめです。

 

 

 

 

分かんなかった人は「アイヒマン」とググればなんとなくストーリーの意味がわかるんじゃないですかね。

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